2018.11.29 06:041948年のスケッチブック あるスイス人画家と少女が描いた日本の光画家のメイリ先生は、第2次世界大戦が始まる直前に日本にやってきた。戦争中の日本での生活は、スイス人の先生にとって、大変過酷だった。一方かくちゃんも、大空襲で家を失っていた。それぞれに傷ついたふたりは、偶然出会う。そして、かくちゃんは、メイリ先生の弟子となったのだ。ふたりで描いた絵...
2018.11.29 06:02暮しの手帖 第4世紀25号メイリの版画第2次世界大戦の戦中戦後10年間、日本人画家たちに絵を教え続けたスイス人画家コンラッド・メイリ。日仏混血の妻キクと二人で住んだ縁の地鎌倉で、06年に開かれた展覧会の版画と、今でも彼を慕う人々を描く。
2018.11.24 13:32ガラス皿の上のざくろメイリ先生のアトリエで、かくちゃんは畳の上にぺちゃんと座ると、道具袋から色鉛筆と画用紙を取り出しました。目の前には、あらかじめメイリ先生が用意したモチーフが並べてありました。かくちゃんはメイリ先生の弟子になったという真剣な気持ちでモチーフを見つめました。1948年6月2日
2018.11.24 13:31りんごとかぼちゃレッスンはまずはじめに、画用紙に描くもののサイズをメイリ先生が教えてくれます。りんごはここからここ、かぼちゃはここからここって。そのサイズの中にかくちゃんが輪郭を描きはじめると、メイリ先生はその線を確かめてさっさと下に降りていきます。それにしても目の前のりんごとかぼちゃはなんて大...
2018.11.24 13:29煙草とパイプやがて、メイリ先生はアトリエに戻ってきて、かくちゃんの描いた線を確認すると、今度は一緒にその絵に色をつけていきます。「あったかいのいろお。つめたいのいろぉ」「だんだぁん。だんだぁん」繰り返し語りかけ、暖色と寒色の関係を教えます。1948年2月9日
2018.11.24 13:28ワインの瓶と本や果物赤い本のまわりには緑色の影が見える。黄色いりんごのまわりには青い色…。「あったかいのいろぉ。つめたいのいろぉ」メイリ先生の話すおもしろい響きの日本語を聞きながら、かくちゃんは色鉛筆を手に取って、画用紙に向かいます。かくちゃんはまだ小さな子どもだから、まるで吸取り紙のように暖色と寒...
2018.11.24 13:27死んでるカモメ朝早く、浜辺を散歩したメイリ先生は、かもめの死骸を拾ってきて、レッスンのモチーフを作りました。かもめは冷たくなっているのでしょうが、かくちゃんには穏やかに眠っているように見えました。家に帰り、自慢げにその絵を見せると、お父さんとお母さんは「外人は変なものを描かせるねぇ…」と不思議...
2018.11.24 13:26外国の少女の写真レッスンのお終いに、いつものように色鉛筆を虹の色のスペクトラムの順番に並べていると、メイリ先生は1枚のカードを見せてくれました。モノクロの外国の少女の写真でした。そして、かくちゃんに言いました。「これを次のレッスンまで描いてきなさい」はじめての宿題です。1948年3月23日
2018.11.24 13:25黄色いティーポットメイリ先生の奥さんは、菊の花と同じ名前のキクさんで、いつもカチャカチャタイプライターを打っています。かくちゃんがレッスンで訪ねると、「いらっしゃい」と可愛い笑顔でにこっとして、またカチャカチャと音を立て、タイプライターを打つのでした。1948年3月15日
2018.11.24 13:24あじさいある日、かくちゃんはお母さんに叱られて、悲しくてたまらなくなって、二階でひとり泣いていました。かくちゃんがふと顔を上げると、お隣のアトリエの窓からメイリ先生が、心配そうにかくちゃんを見ていました。1948年7月26日